日本の幼稚園とオーストラリアのキンディー、意外な共通点と違い

砂場に掘った水路で水遊びをする子どもたちと、少し離れて見守る先生

目次

お子さまとオーストラリアで暮らすなら、現地の幼稚園にあたるキンディー(kindy)がどんなところなのか、気になる方も多いと思います。

日本の幼稚園やオーストラリアのキンディーを訪ねてみると、目にする光景の多くがよく似ていることに気づきます。子どもたちは自分で考えた遊びに夢中になり、動物園や博物館に出かけたり、公園やビーチで外遊びをしたりしています。違いが見えてくるのは、先生がどんなときに関わり、どんなときに見守るのかといった、もっと細かな場面です。子どもが自分で問題を解決する力を、先生がどこまで信じて任せるのかも、国によって少しずつ異なります。

この記事では、日本とオーストラリア(主にクイーンズランド州)の幼児教育を取り上げます。両国に共通する点や、先生が子どもの遊びにどう関わるかを紹介し、キンディーが家庭で日本語を話す子どもをどう支えているかもお伝えします。日本で園の外にも広がっている、子どもの自立を見守る考え方にも触れます。最後に、キンディーを見学するときに確かめたいことを3つ挙げます。

オーストラリアで学ぶことのメリットについては、「オーストラリアで学ぶ、5つのメリット」の記事もご覧ください。

遊びが中心なのは、日本もオーストラリアも同じ

日本の幼稚園ではみんなで同じことをして、オーストラリアのキンディーでは子どもが何でも自由に選ぶ、と思っている方もいるでしょう。実際は、どちらもそれほど単純ではありません。OECD(経済協力開発機構)の報告によると、オーストラリアのカリキュラムは、子どもが自分から始める学びと先生が支える学びのバランスを重視しています。

日本の幼稚園も、みんなで同じことをするばかりではなく、遊びを中心に保育を組み立てています。国が定めた幼稚園教育要領でも、子どもが自分で活動を選び、広げていけるような環境を整えることが、先生に求められています。文部科学省の有識者検討会が2024年10月にまとめた、これからの幼児教育のあり方についての最終報告も、同じ考え方に立っています。報告では、子どもが自分から始める遊びや、体を通した直接的・具体的な体験が重んじられています。

どちらの国でも、子どもたちはひとつの遊びの中で、思いついたことを試したり、順番を守ったりします。意見がぶつかったあとに、どうすれば遊びを続けられるかを考えることもあります。遊びの中でのやりとりを通して、子どもはその場の雰囲気を読み取れるようになります。相手の身振りや表情の意味を理解し、まわりの状況に合わせて動けるようにもなっていきます。その積み重ねは、人の気持ちに共感したり、友だちと協力して何かに取り組んだりする力にもつながります。

両国で少し違うのは、先生が遊びの環境をどう整え、子どもにどう関わるかという点です。ただし、先生の関わり方は、日本でもオーストラリアでも園によって大きく異なります。

日本の先生が大切にする「見守る」という関わり方

日本の幼稚園では、園庭でも保育室でも、子どもが自分から動き出し、始めた活動を発展させていけるように環境を整えることが重視されています。たとえば先生は、遊ぶ場所のつくり方を工夫したり、子どもが手に取りたくなる素材や道具を用意したりします。そのうえで先生は、活動の様子を注意深く見守ります。子どもから離れすぎることはなく、子どもの安全にいつでも目が届く距離にいます。

日本の保育では、子どもに任せながら近くで様子を見るこの関わり方を、「見守る」と呼んでいます。2024年に発表された研究では、森のようちえんと公立幼稚園で働く保育者12人に、子どもが自然と関わる場面でどう見守っているかを聞いています。インタビューでは、すぐに口や手を出さずに待つことや、子どもが助けを求めたときに手を差し伸べられる距離にいることが語られています。子どもが見つけたものにほかの子も気づけるように、さりげなく声をかけて、友だち同士をつなぐという話もありました。

すぐに手を出さずに待ち、必要なときには手を貸すという関わり方は、クイーンズランド州のキンディーでもよく見られます。

子どもの興味から学びを広げるキンディー

クイーンズランド州のキンディーは、小学校の最初の学年にあたるプレップ(Prep)の前の1年間に通う、幼児教育のプログラムです。その年の6月30日までに4歳になる子どもが対象です。州のキンディー学習ガイドライン(QKLG)では、子どもの学びと発達を、次の5つの領域に分けて示しています。

  • アイデンティティ(自分らしさ)
  • つながり(人や地域、自然との関わり)
  • ウェルビーイング(心と体の健やかさ)
  • 主体的な学び
  • コミュニケーション

キンディーの先生は、子どもたちが何をしているのかをよく観察し、その活動をさらに広げていきます。子どもの考えに沿って進めることもあれば、先生が遊びを導いたり、新しい活動を提案したりすることもあります。

たとえば、子どもたちが砂場に溝を掘って、水を流そうとしているとします。先生は、子どもたちに問いかけてヒントを出すことがあります。「どうしたら水がもれないかな?」「流れをゆっくりにするには、何ができるかな?」「砂を動かさずに、水の流れる向きを変えられるかな?」と声をかけるのです。反対に、子どもたちが自分でもう一度試せるように、あえて口を出さずに待つこともあります。

もうひとつ、子どもたちが園庭で小さなトカゲを見つけた場面を考えてみましょう。トカゲは走ったり跳ねたり、あちこちによじ登ったりしています。子どもが近づきすぎたり、室内に持ち込みたがったりしたときは、先生が止めに入るかもしれません。あるいは、トカゲをそっと容器に入れるのを手伝い、クラスのみんなに見せて、そのままトカゲについて話し合うきっかけにすることもあります。どの対応がよいかは、その場にいる子どもたちや状況によって変わります。

キンディーの先生は、ふだんから目の前の子どもたちに合わせて関わり方を変えています。そのため、ひと口にキンディーといっても、子どもたちの顔ぶれや先生、学ぶ環境によって、雰囲気はかなり変わります。広い園庭に木がたくさんある園もあれば、街の中心部にあって、砂場のある小さな中庭しかない園もあります。

日本、オーストラリア、韓国の保育者を比べた国際調査では、3か国とも畑づくりや外遊びなど、自然と触れ合う活動を多く行っていました。そのうえで、オーストラリアと韓国の保育者は、資源を大切に使うことや環境問題を扱う保育を重視していました。日本の保育者は、資源や環境問題を扱う保育には、あまり重点を置いていませんでした。論文は、この違いの背景に、国ごとの政策やカリキュラムの指針の違いがあると見ています。

園の外での自然体験については、クイーンズランド州で出会える野生動物を「オーストラリアの野生動物と触れ合う」の記事で紹介しています。小学校に上がってからの遠足やキャンプについては、「オーストラリアの遠足ってどんなもの?」の記事をご覧ください。

日本語で育つ子どもをキンディーはどう支えるか

日本人のご家庭にとって、言葉のことは特に気になる点だと思います。州のキンディー学習ガイドライン(QKLG)は、子どもの文化や家庭の言葉に配慮した保育を行うよう、先生たちに促しています。家で使っている言葉や、お気に入りの本やお話を園でも大切にしてもらえると、子どもは安心して新しい環境になじみ、友だちとも関わりやすくなります。

オーストラリアには、さまざまな国や民族にルーツを持つ人たちが暮らしています。そのため、家庭の言葉や文化への配慮は、多くの子どもにとって大きな意味があります。

いろいろな国の友だちに囲まれて遊び、学べることは、日本人のご家庭にとっても大きな魅力のひとつでしょう。子どもたちは毎日さまざまな言葉を耳にし、自分とは違う文化について学んでいきます。新しい友だちと遊ぶ中で、言葉の壁や先入観を乗り越える経験も重ねていきます。

オランダで行われた研究では、2つの言語を話すバイリンガルの子どもと、1つの言語だけを話す子どもを比べています。覚えながら情報を処理する課題では、バイリンガルの子どもの成績が上回りました。家庭の経済状況の違いを考慮しても、同じ結果でした。バイリンガルの子育てについては、「バイリンガルの子どもを育てる4つのメリット」の記事で詳しく紹介しています。

ただし、家庭の言葉をどこまで支えてくれるかは、園によって違います。ビクトリア州の保育者20人を対象にしたオーストラリアの研究では、子どもの言語や文化の多様性についての考え方が、3つに分かれていました。研究者は、複数の言語を使って育つ子どもの言葉の発達について、養成課程と現職研修の両方で学ぶ機会を増やす必要があると指摘しています。そのため、キンディーで子どもの日本語にどこまで配慮してもらえるかは、担当する先生によって変わることがあります。

園の外にも広がる、日本の子どもの自立

日本では、子どもの自立を後押しする考え方が、園の外にも広がっています。2023年秋に行われた全国調査では、公立小学校に通う子どもを持つ母親6,000人が回答しています。直近の1週間に毎日歩いて登校した子どもは、82%でした。最も多いのは近所の子どもと一緒に登校する形(登校班を含む)で、ひとりで登校している子どもは15%でした。

学校が家から近いことに加えて、地域の人たちの支えもあるので、子どもたちは歩いて通学できます。登下校の時間には学校の職員や地域のボランティアが通学路に立ち、保護者や地域の人たちもパトロールをしています。困ったときに子どもが助けを求められる「子ども110番の家」には、住宅のほか、お店やコンビニエンスストア、郵便局も協力しています。

日本テレビの『はじめてのおつかい』も、子どもの自立を大人が見守るという考え方を題材にした番組です。小さな子どもが初めてひとりでおつかいに出かけ、撮影スタッフは子どもに気づかれないように、すぐ近くで見守ります。海外でも『Old Enough!』の題名で配信されました。「日本とオーストラリアにおける幼児教育スタイルの違い」の記事では、この番組にも触れながら、両国の子育ての違いを紹介しています。

歩いて学校に通うことと、自分で遊びを選ぶことでは、求められる力はまったく違います。それでも、まわりの大人が先回りせずに子どもに任せることで自立心が育つ点は、どちらにも共通しています。

キンディーを見学するときに確かめたい3つのこと

パンフレットを読むよりも、先生が子どもとどう関わっているかを実際に見ると、園の様子がよくわかります。クイーンズランド州のキンディーを見学するときは、次の点を確かめてみてください。

  • 先生が口や手を出す前に、子どもが自分で問題に取り組む時間がどのくらいあるか
  • 本や歌、あいさつ、保護者とのやりとりなどを通して、子どもの家庭の言葉をどのように取り入れているか
  • 園庭など外の環境によって、一日の過ごし方がどう変わるか(木の多い広い園庭と、街なかの小さな中庭とでは、生まれる遊びが違います)

まとめ:日本とオーストラリアの幼児教育

日本とオーストラリアの幼児教育には、多くの保護者の方が思っている以上に共通点があります。どちらの国でも、遊びと子どもの自立がますます重視されるようになっています。大人が答えを先に出さず、子どもが自分で問題を解決できるように任せている点も同じです。

違いが表れるのは、細かなところです。たとえば、誰が子どもを見守っているのか、どんな素材や道具が用意されているのか、子どもが園でどんな言葉を耳にするのか、といった点です。クイーンズランド州の幼児教育は、遊びを大切にする点では日本とよく似ています。さらに、子どもがいろいろな国の友だちや言葉に毎日触れながら、ものの見方を広げていける環境でもあります。

参考文献

まずは現地の下見も兼ねて、Hello Kids(親子留学プログラム)をご利用になってみてはいかがでしょうか?

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(Hello Kids事務局)