親御様ならどなたでも、子供の自信や幸せ、健康を願うものですよね。
では、子供の自己肯定感を高めるために、親はどのようなアプローチをすればいいのでしょうか?
心理学者のリサーチや日本と西洋社会とのアプローチの比較をしながら、改めてこのテーマについて考えてみたいと思います。
「褒めすぎない」
西洋社会ではしばしば、親が子供のしたことについて、やや過剰に褒める傾向があると言われています。
“Your Kids Are Listening: Nine Messages They Need to Hear from You.”の著者で、心理学者であるJim Taylor氏は下記のように述べています。
「もしあなたが、自分の子供がしたことに対して ”すでに十分にできている”と感じたなら、”それ以上やらなくてもいいよ”と言うかもしれません。ですが自信とは、物事を繰り返し実行することや、挑戦して失敗して、そしてもう一度挑戦するという過程を通じてこそ得られるものだということを親は理解をする必要があります。」
いかなる状況でも褒められていると、次第に子供たちは自分のことを完璧だと考えるようになったり、実際にはできていなくても褒められるということに慣れてしまいがちです。
このような場合には、過剰に褒め称える代わりに、「たくさん勉強したから成績が良くなったね。」「一生懸命練習したからうまくなったね」という声かけが効果的です。
「リスクをとらせる」
子供を甘やかしすぎたり、あらゆる危険から彼らを守ろうとすることは、成長のためにはかえって逆効果です。
例えば、日本では子供を一人で歩いて学校へ通わせるのが一般的ですが、海外では学校への送り迎えを親がするケースが多いです。
イギリスでは、8歳の子供を学校へ一人で歩いて通わせる割合は1971年の80%から2006年には12%にまで大幅に低下しています。これは、犯罪率の低さにも関わらずその傾向が年々顕著になっているのです。
心理学者の研究結果によると、高い雲梯(うんてい)に登るように、子供にリスクをとらせるほど、より勇敢な子供に育つ傾向があることが明らかになっています。
反対に、自由に遊ぶことを妨げられ、そのようなリスクを取る経験が少ない子どもたちほど不安や過敏な性格になりがちです。
この解決策は、至ってシンプルです。
もちろん難しい状況があることも多いと思いますが、子どもたちの想いの向くままに遊ばせるなどの自由を与えることが何よりも重要です。
「子供自身に判断をさせる」
例えば、その日の気温に合わせて適切な服装を子供自身に決めさせるような、そんな経験を通じて、子供たちは判断力を身に付けていきます。
Kids&CompanyのCEOであるVictoria Sopik氏は、彼女自身の子供たちに対していつも自分で服を決めるように言っています。
「子供たちが暑さと寒さの違いを一度理解できたら、あとは彼ら自身に任せるようにしています。彼らは自分自身の身体をコントロールしたり、選択に責任を持つべきなのです。」
さらに彼女は下記のように述べています。
「智慧は経験から、経験は”誤った”判断をすることから得られるのです。」
幼少時から(ある一定の範囲内で)自分自身で問題を解決させることで、レジリエンス(回復力・復元力)が育まれるのです。
また、ある幼児教育の専門家は、子供に対して「 自分自身が自分に一番詳しい専門家なんだよ。他の誰も自分については教えてくれないからね。」と声掛けすることを勧めています。
「お手伝いをさせる」
子供たちは自分にできることを示す機会や、人の役に立てるチャンスを求めているものです。
例えば、家事のお手伝いやベッドメイキング、夕食のためのテーブル準備、料理のお手伝いなどもそうした絶好のタイミング
いつかは家から巣立ち、独立をしていく彼らにとって、このようなお手伝いの機会は子供たちが責任感や自己信頼についての学びを得るために非常に有効とされています。
また、ある研究結果では、日頃からお手伝いをする子供たちは高い自己肯定感を感じており、責任感が強く、イライラをコントロールでき、目先の報酬に惑わされにくいという傾向が明らかになっています。
「子供の好奇心を解放する」
子供の自信は彼ら自身が興味や関心を持つことを行い、最後までやり抜くことによって、次第に高まっていきます。
水泳で泳げるようになることや家族の絵を書いて完成させることなど、あらゆる経験においても、自分が興味を持ったことを最後までやり抜くという経験が、達成感を与えるためには大切です。
心理学者のPeter Gray氏は、「子供たちは親からのプレッシャーや制限なく、彼ら自身のパッションに従って行動できるように時間を与えられるべきだ」と述べています。
「友達を作ったり、アイディアや形にすること、退屈さを味わいながらも自分でそれを打ち破ること、そのためにも彼らには時間が必要なのです。」
私たちは親は、一歩下がって、子供たち自身の幸せへと繋がる道を見つけるために、パッションや興味、関心に従って自由に行動できるように見守ってあげることが大切です。
チェックリスト
さて、ここからは実際に何から始めれば良いのかご不安な方に向けて、カナダのMental health Associationが提唱している”自己肯定感チェックリスト”をご紹介致します。
☑️ 周囲の子供たちよりも優れていると思わせるのではなく、自分自身が特別な存在なのだという意識を子供に持たせましょう
☑️ 目標を設定する – 目標に向かって努力すること、そしてその達成にプライドを持たせることを子供に伝えよう
☑️ 繰り返しチャレンジをさせる – リスクを冒し、何度も新しい挑戦をすることを促そう
「自己肯定感とは、単に自分自身の長所に目を向けるだけではなく、持ち合わせている能力も弱みも全てを受け入れて、その中でベストを尽くせるようにすることが大切です。」
「例えば、もしもあなたの子供がスタープレーヤーになれるほどにテニスが上手くなかったとしても、テニスを楽しむことを止めさせてはなりません。」
日本と西洋の子供たちとの比較
興味深いことに、国際的な研究において日本や台湾などでは自己肯定感が相対的に低いレベルである一方で、概ね西洋諸国ではより高いレベルにあることが明らかになっています。
また、研究者のLawrence T. White はこの差異の原因には、それぞれの国における文化的な背景があることを指摘しています
つまり、個人主義的とされる欧米諸国やオーストラリアと比較すると、集団主義的ともいわれる日本や中国、韓国の自己肯定感のレベルは総じて低いというものです。
例えば自己肯定感の度合いを測定するある研究において、中間値を越えた人の割合が日本人は55%である一方で、欧米人やカナダ人においては93%もの人々がそれを上回っているという結果が出ています。
「集産主義者と言われる国の人々、つまり日本や中国l、韓国の人々は自分自身の価値を公平で正確に把握できていることが多いですが、個人主義者と言われる国の人々は反対に現実にはそぐわないほど、自分に対して好ましい認識を持っているケースがしばしば見受けられます。」
これらは西洋諸国の親たちが、子供たちの自己肯定感を育むために褒めることに重きを置くアプローチに対して、日本人の親たちは物事が完璧でない限り、子供たちが欲求不満になってしまうことを恐れて、褒めることをためらいがちな傾向にあるという状況にも見て取れます。
西洋の学校では、”Student of the Week”といった子供たちを褒め称えるための様々なイベントや仕組みが一般的に設けられています。
このように日本では、親も子供たちも”建設的な批判”を通じてパフォーマンスを向上させていくことを是とする風潮があると言えるのではないでしょうか。
White博士はまた、「多くの国々では、個人主義レベルの上昇は、自己肯定感のレベルを引き上げることを伴っている」と結論づけています。
さて、ここまで見て頂いたように、あなたの子供がどんな文化や国に属していようと自己肯定感を育むためには、ただ闇雲に彼らを褒めるのではなく、お手伝いをさせ、リスクを取らせて、彼ら自身のパッションに従って行動ができるようにサポートを行うことが大切なのです。
Hello Kidsでは、海外生活を通じてチャイルドケアセンターで英語を学びながら、異文化環境の中で子供たちが自分自身のパッションを見つけ、それを伸ばしていくためのサポートを行っております。
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